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Engadget Logo エンガジェット日本版 Rakuten Mini で特定の周波数が使えない──「Band 1 問題」を斬る(石野純也)

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楽天モバイルの自社ブランド端末である「Rakuten Mini」に、特定の周波数が利用できない問題が浮上しています。トラブルが報告されたのはTwitter。複数のユーザーが、一部の個体でスペック表に記載のあるBand 1(2.1GHz帯)が利用できない旨を報告していました。

これに対し、楽天モバイルは10日、サイト上の記載を修正しています。対応周波数が後から変わり、しかもロットによって異なるというのは、前代未聞の事態です。

周波数の変更があったのは、5月以降のロットになるようです。楽天モバイルが公表した製造番号で言うと、「351676110680487」以前のものがBand 1対応、以降のものが非対応になるとのこと。Band 1がなくなった代わりに、元々のスペック表にはないBand 4(1.7GHz / 2.1GHz帯)やBand 5(850MHz帯)に対応しました。

Band 4と5の追加は、Rakuten Miniの米国対応を強化したかったためです。元々のRakuten Miniは、対応周波数の関係で、米国のローミング先(非公開ながら、AT&TとT-Mobileと見られる)にほとんど接続することができませんでした。これを改善しようとした際に、Band 1が何らかの事情で削除されてしまいました。周波数が近いため、技術的に両対応は難しかったのか、別の意図で外したのかは定かではありません。

一方で、楽天モバイルはBand 3(1.8GHz帯)しか保有しておらず、国内ローミング先のauもBand 18 / 26(800MHz帯)に提供する周波数を限定しています。いずれも、周波数にも、新ロットのRakuten Miniが対応しているため、楽天モバイル広報部は「楽天回線およびパートナー回線にてご利用いただく場合、今回の対応周波数帯の変更によるサービスへの影響はない」としています。

確かに、楽天モバイルの自社回線や、同社がパートナー回線と呼ぶau回線で使うぶんには、Band 1がなくても通信自体はできます。とは言え、Rakuten Miniのスペック表にはBand 1が記載されているため、実際に使えないとなると、有利誤認を招くおそれがあり、まったくほめられたことではありません。そのため、楽天モバイルでは、「強い要望がある場合、お電話いただければ交換対応も検討する」(広報部)としています。

ただし、Band 1が非対応になった影響がまったくないわけではありません。むしろ、以下で挙げるように、複数の観点で問題があると言えるでしょう。

1つ目の問題点は、対応キャリアが狭まること。Rakuten Miniはキャリア端末であるのと同時に、SIMフリースマホとして端末単体でも販売されています。eSIMオンリーのため、利用できるキャリアには制約がありますが、国内キャリアでは、IIJmioのフルMVNO回線を利用可能。eSIM対応している海外キャリアのプロファイルを書き込み、海外ローミングとして日本で利用するといった使い方も可能になります。

他社回線を利用する際に、Band 1はもっとも重要な周波数帯と言っても過言ではありません。IIJが回線を借りるドコモは、Band 1を基盤に全国のエリアを構築しているため、事実上、国内他社の利用ができなくなってしまいます。また、auやソフトバンクもBand 1のエリアはかなり広く、ローミングキャリアのeSIMでこれらのキャリアに接続する際にも、支障が生じます。

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エンガジェット日本版 Rakuten Mini で特定の周波数が使えない──「Band 1 問題」を斬る(石野純也)

2つ目の問題点として、国際ローミングが挙げられます。Band 1は日本のみならず、欧州やアジアで採用されている周波数帯。グローバルで幅広く採用されるBand 3ほどではありませんが、Band 1を使うキャリアも少なくありません。

Band 1に非対応ですと、こうしたキャリアのネットワークに接続する際に、エリアが限定されてしまうおそれがあります。国際ローミングは楽天モバイル自身が提供しているサービス。告知なくエリアが狭くなるような対応をすべきでないのは、言わずもがなでしょう。

3つ目はワーストケースですが、技適の問題もあります。旧仕様のRakuten Miniの認証情報を見ると、Band 1で工事設計認証を受けていることが分かります。Rakuten Miniのケースの場合、技適を取得した周波数で通信できないことになるため、技適と異なる周波数で通信できるのとは逆で、電波法違反には当たらなそうにも見えますが、楽天モバイルでは、「現在、関係各所に再申請が必要かを確認中」としています。

変更を加えたのはソフトウェアのみとのことですが、電波特性が変わっていたとなれば、取得していた技適を変更せざるをえなくなるかもしれません。新バージョンも技適はそのままになっているため、最悪の場合、回収や販売停止を余儀なくされます。実際、過去にはASUSのZenFone Max Pro(M2)が、うっかり海外向けに作られた同一名称の製品を流通させてしまい、回収および販売を停止したことがありました。


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Rakuten Miniは、約2万円で発売になり、その値ごろ感やコンパクトなサイズ感から人気を博していました。一方で、楽天モバイル自体の契約者数が伸び悩んでいたこともあってか、5月27日からは新規契約と同時購入で1円になるキャンペーンを開始。その成果もあり、販売ランキングは急上昇。BCNランキングによると、キャンペーン開始の翌日にあたる5月28日には、日時ランキングで首位に躍り出ていました。

注目を集めているタイミングでのトラブルなだけに、何とも間が悪い印象がありますが、発売後に国内で使える周波数帯が減ってしまうというのは常識を覆すことをモットーにしている楽天モバイルらしいところ。もちろん、悪い意味でですが。ソフトウェアで仕様変更ができそうなだけに、表記の見直しではなく、ユーザーが新旧どちらかを選べるようにするなどしてほしかったと感じています。


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