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このコロナ禍で不要不急の移動を避けるひとは多いと思いますが、だからといってまったく家から出ないで過ごすというのは不可能です。在宅勤務といっても職種によってできないことがあるし、買いものに出ないわけにはいきません。
都会生活者の中には、このコロナ禍で移動方法を電車やバスなどの公共交通機関から、休日にしか使っていなかった、あるいはコロナ禍を機会に買ったクルマでの移動に変えたひともいるかもしれません。
そんなクルマ使用度が増えたこともあり、クルマにはこれを買って常備しておけば安心・便利という用品をご紹介します。
よくいわれるものから、筆者の経験で「ぜひ置いておくべき!」「あると便利でいいな」と思われるもの、2つのジャンルに分けてご紹介します。
ここではよくいわれるものを掲げました。出先で有事が起きた際になくては困るもの、日頃のメンテナンスのためにもぜひあったほうがいいだろうというものを挙げています。
1. 脱出用具
衝突・衝撃でクルマが変形し、ドアが開かなくなったときなどに使う用具です。シートベルトを切るカッター機能と、ガラスを割るハンマー機能、2つの機能を有しています。
事故時、通常はシートベルトを着用しますが、もし横転して車体サイドや屋根が下向きになっている場合、ベルトのELR(Emergency Locking Retractor:緊急時ロック式巻取り装置)のロック作動により、テンションがかかった状態のときは、ベルトを外すことはできません。
筆者は何かの体感イベントで、運転席着座&ベルト着用状態で擬似横転を試したことがありますが、実際、ベルトはロックがかかったままでした。下向きの重みを受けてELRが働き、ロックしっぱなしだったのです。このときに使うのがこの脱出用具です。
内蔵されたカッターでベルトを切り、まず身体をシートから開放します。自由の身になっても脱出できなければ意味がありません。
こんどはカッターの反対側のハンマーでガラスを割ります。家屋用のガラスと異なり、自動車用のガラスはフロントの合わせガラスもフロント以外の強化ガラスも簡単に割れません。このハンマーの先端で、ガラスのなるべく端のほう(枠に近い部分)を叩きます。衝撃を先端に1点集中させることで割らせようという道理。
これは運転席から腕を伸ばしさえすれば届く位置になければ意味がありません。グローブボックスに入れておくと、ベルトをした状態では手が届かず、ふたを開けることさえできません。設置場所はドア側シートサイドあたりがいいんのではないでしょうか。
2. 非常信号灯
クルマを買えば必ず装備されている発炎筒。これには有効期限があり、期限を過ぎると車検に通りません。期限は製造から4年ほどで、新品は700円位で買えますが、たった700円といえど、期限を頭に入れて置くのも面倒です。
そこで、有効期限のない発炎筒と同じ機能を電池式のランプ式に換えた非常信号灯。サイズが同等ですから、発炎筒の場合と同じ場所に収めることができます。
しかし、発炎筒も電池の期限があるので同じなのですが、おススメする理由はもうひとつ、発炎筒の燃焼時間の問題です。車両添付の発炎筒の燃焼時間は5分。保安基準では「5分以上」となっているので、5分でもいいのですが、使用回数はたった1回です。
それに引き換え、筆者のエーモン工業製の品は単4電池2本で9個の赤いLEDが連続20時間点滅するもので、電池交換にさえ気をつけていればかなり持ちます。
現在販売中のものはLED9個、単4電池はそのままに、連続点灯(点滅)時間は8時間となっていますが、明るさが1.7倍の改良版となっているようです。
3. タイヤ圧ゲージ
筆者はセルフスタンドでの給油3~4回に1回、タイヤ空気圧を点検します。そのための用具がこのゲージです。
タイヤのバルブに口金を押し当てると、エア圧値が刻まれた棒が内圧に応じて飛び出してくるだけの簡単なものですが、これが意外と正確で、スタンドの空気入れでセットしたタイヤ圧値とゲージ値がほとんどぴったり!
世の中にはメーター式、ホース付きのメーター式などがありますが、車内に常備するにはかさばるので、この簡単なペン型で充分です。たしか700円ほどで買ったと記憶していますが、なかなか便利で20年ほど使いっぱなしでいます。
筆者の年間走行距離は、基本的には2万2000km、いまはこのコロナ禍で年平均で1万6000kmほどにまで下がっていますが、ほぼ毎日何かしらの用件で動かしているため、測ってもタイヤの空気はほとんど抜けていません。
逆に日常の様子を把握しておけば、どれか1本だけ圧が低いことで、即座にタイヤ異常を発見することができます。みなさんも1本入手してみてはいかがでしょうか。
4. タイヤ溝ゲージ
タイヤのメンテナンスでタイヤ圧とともに大切なのが、タイヤ溝の点検です。溝が浅くなってくるとグリップが弱くなり、特に雨天時はアスファルトとタイヤ間の雨水の逃げ場がなくなり、滑りやすくなります。
その究極状態が、水にタイヤが浮いてしまう「ハイドロプレーニング現象」です。タイヤが水をグリップするはずはありませんから、こうなるとハンドルもブレーキも効かなくなります。
ハイドロプレーニングは高速走行時の専売特許のように語られますが、路面と雨量、そして路面への水の溜まり方と速度の関係次第では、街乗り速度でも起こります。加速時、駆動輪が水たまりに浸かった瞬間だけエンジン回転が急上昇したら、それは街乗り速度でもハイドロプレーニングが起きているのです。
車検がパスできるタイヤ溝の深さは1.6mmですが、見た目に溝がまだ半分弱残っていても、雨の日にマンホールや路上ペイント(横断歩道など)の上でブレーキングして瞬間的にABSが作動するようになってきたら、タイヤ一新を視野に入れる頃です。
定期的な洗車は、タイヤを確認するいいタイミングでもあります。洗車の後にタイヤの空気圧と溝の深さもきちんと見てあげましょう。
5. ブースターケーブル・牽引フック
別個で採り上げるべきなのでしょうが、筆者の持っているものはセット品なので、ここでは同時に紹介します。いずれも出先のトラブル時に使うもの。
ブースターケーブルは、出先でバッテリーを上げてしまったとき、他車から電気をもらうときに使います。最近ではこのケーブルの代用品としてジャンプスターターという、充電して使うモバイルバッテリーのようなものがあります。
充分な電気が蓄えてあれば他車・他者の手をわずらわせることなく解決できるのが魅力です。こちらのほうがかさばらないように見えるのですが、実際にはクリップ付きのコードに充電コード、これらを収容するケースが結構大きく、占有スペースはブースターケーブルと同じくらい。ひとつの難点は価格が高いことで、この点に筆者は買うことをためらっているところです。
牽引フックは故障して他車に引っ張ってもらうとき、または故障車を引っ張るときに使います。余裕を持って自分のクルマの重量より1ランク上の耐久性のものを選ぶといいかもしれません。
どのクルマも故障する可能性はあるわけですから、牽引「される」ときのために、フロントには牽引フックがあるのですが、逆にいまのクルマのリヤには、昔と違って牽引フックを備えるクルマは少なくなってきています。そのようなクルマでは他車を牽引することはできません。
バッテリー上がりにしても牽引にしても、助けてもらう側が助ける側のケーブルやフックをアテにするというのは感心しません。万一の際の用具を車載しておくのは、みんなが使う公道を走るドライバーひとりひとりが備えるべきエチケットだと思います。
6. 三角表示版
故障時、後続のクルマに自車の故障による立ち往生を知らせるためのものです。といっても車載義務はなく、一般道路上での故障で設置しなくても違反にはなりませんが、高速道路上で立ち往生しているのに標示しないでいると「故障車両標示義務違反」に問われます。
したがって、高速道路を日常的に利用するドライバーは車載義務だと思ったほうがいいでしょう。
7. 充電器
故障などでディーラーやJAFに連絡をしたいと思って携帯電話orスマートホンを手にしたらバッテリーがカラだった! こうなったら車外に出て公衆電話を探しに行かなければなりません。
外に出られるならまだいいのですが、豪雨による土砂崩れなど、水害に襲われたら外に出るどころではありません。このときに電話のバッテリーが少ない、またはカラだと救援要請もできません。ということにならないよう、充電器をひとつ用意しておくと安心です。
電源ソケットに挿して使うだけのものですが、災害時には命綱にもなります。クルマは発電機でもあるのですから。
筆者のように、自前のアンドロイド携帯電話、会社支給のiPhoneという2台持ちの方もいると思いますが、だからといって2種の充電器を持つのも億劫です。
筆者はiPhone側にマイクロUSB→ライトニングに変換するコネクターを挿しっぱなしにしています。このコネクターの値段がちょっと高いのですが、このようにすることで充電器もひとつですみます。
形が様々な充電器を複数というのは、狭い車内では意外と収容に困ります。コードは掃除機のように内部に巻き取るタイプのものが便利です。
8. 懐中電灯
昔のクルマの中には懐中電灯を標準装備にしていたものがありましたが、いまはありません。懐中電灯もひとつ車内に用意しておくと便利です。事故や故障は昼夜問わず起こります。自在に光を向けられる懐中電灯があるとないとではずいぶん違うと思います。
筆者は2.で述べたLED式の赤点滅の信号灯機能付きの懐中電灯を載せています。有事のためだけではなく、夜に床に落ちたものを探すとき、昼間でもボンネットの中や計器盤裏といった暗がりの中を調べるのに使っています。昼間の炎天下で行ったエアコン実験のときなども重宝しました。
9. 携帯トイレ
先頭が見えないほど数珠つなぎになっている渋滞の列…そんなときに限って! このようなときのために、携帯トイレも備えておくべきです。特に小さいお子さんを連れての移動時には必須でしょう。
いや、大人にだっていざというときのためには必須。もしかしたら、重要度は1.の脱出用品と同じくらいかもしれません。
10. チョーク
チョークといっても、冬場のエンジン始動時に燃料を濃くするための、あのチョークではありません。白墨です。チョークをクルマに備えておいていつ使うのか?
事故を起こしたり起こされたりしたとき、けが人の有無を確認して救急車などを呼ぶのは当然として、その時点で、他の交通の流れを乱さないため、速やかにクルマを移動しなければなりません。
その前に、加害側、被害側のクルマの位置を移動後でも再現できるよう、路面にチョークで路面にマーキングしておくのです。それぞれのクルマの前後バンパー、4つのタイヤ位置がわかれば充分。
これは筆者の経験ですが、あるところで信号待ちの最中、スクーターが追突してきたことがありました。この日は休日でクルマも多くあり、即座に道路の左側に移動しようとしたのですが、その際に先述のようにマーキングしておいたら、警察のひとも感心していました。その場を見ていなくても、後から様子がわかるようになっていたからです。
結局このときの過失割合は100:0になりましたが(信号待ちでの追突なので、別にチョークがなくても100:0になったでしょうが)、もちろんチョークを車載しておくのは警察官を感動させるためではなく、後々でも確実な検分・検証ができるようにするためです。
いまはドライブレコーダーがだいぶ普及していますが、クルマのすぐ周囲までは記録できないでしょう。幸いにしてこのチョークが活躍したのはこの1回きりで、運転し始めから12年目のこと。
以後15年経ったいまに至るまでも役立ったことはなく、クルマが変わっても同じものを車載しっぱなしですが、場所をとるわけではないし、文房具売場で安く変えるものなので、万が一のときのために1セット用意しておいてはいかがでしょうか。
11. トルクレンチ
タイヤ脱着するたび、車載工具のレンチでナットを自分で締めていたのですが、果たして指定どおりのトルクで締め上げられているのかどうか、不安がありました。要するに経験で作業していたのです。
トルクレンチで締めたあとに緩めるときは、勘で締めていたときと同じ力でまわったので、勘でのトルクも正しかったようですが、それでも確実性があるのとないのとでは大違いです。
いつも考え込むのは、いつ使うかわからないときのためにクルマに常備しておくべきなのかどうかということです。筆者の場合はいざというときになければ困るので、迷ったまま車載していますが、「場所をとるからいいヤ」という方は家に置いておき、出先での有事では車載工具で一時しのぎをしたあと、帰ってから確認するのがいいでしょう。
1. 手袋
出先でクルマが不具合を起こしたとき、休日に整備をする際に便利です。また、日常的には、セルフスタンドを使っているひとの場合ですが、給油作業時にも手袋があれば便利です。
筆者は軍手の他、黒塗り高級車の運転手がはめるような白い手袋(ドライビンググローブ)も用意し、エンジンルーム作業やセルフ給油時にはこちらのほうを多く使っています。
表面にゴムのポチポチがあるやつは、薄くて作業がしやすく滑らないので、怪我の心配がない作業のときにはこちらのタイプが作業性は優れます。
2. ビニール袋、ブルーシート
特に目的はありませんが、出先で何らかの災害にあったときなど、何かの役に立つのではないかという予感だけで常備しています。ビニール袋はタダ(コンビニ等有料化の前に用意)、ブルーシートは100円で買いました。
3.サングラス
体質上、目が強い光に弱いひとには必須でしょう。筆者はそれほどでもありませんが、季節や時間帯によって太陽に向かって走ることがあるときには使います。筆者は、渡哲也風のサングラスをクルマに常備。ふだん眼鏡をかけているので、度が入っていないこのサングラスを眼鏡の上にかけるという、ハタから見たら何ともまぬけな使い方をしていますが、強烈な直射日光下を走る際には、あるのとないのとではまったく違います。
これはだいぶ前にコンビニエンスで1000円で買ったものですが、充分役立っています。探せば安いものはいくらでもあるので、おひとついかがでしょう?
4.液体石鹸
これはクルマ関連でも運転に関するものではありませんが、筆者は液体石鹸(ボディソープ)を、30ccボトルに入れてグローブボックスに忍ばせています。筆者はときどきコンビニエンスストアでトイレを借りますが、石鹸がない場所があります。コンビニエンスに限らず、レストランでも用意していない場合もあります。特に潔癖症ではないながらも、そのような場所に出くわした場合に便利です。
どうでしょう? 牽引フックやブースターケーブル、トルクレンチなどは、故障やパンク時にはJAFを呼ぶというひとには不要だと思います。また、これら以外のものも、ひとによりけりで要不要があるでしょう。
筆者の経験によるものも多いですから、あくまでも参考にしてみてください。また、「こんなものもあれば便利だよ」というものがあれば、ぜひ教えていただければと思います。
(文・写真:山口 尚志)