Valveの携帯ゲーミングPC、Steam Deckが発売された。一部の購入者の元には、すでに製品が送られ始めている。Valveの共同創業者であるゲイブ・ニューウェルは、iPhoneが携帯電話業界を一変させたときのように、Steam DeckはPC業界に大きな影響を与えると考えている。また彼によれば、Steam Deckの需要は、「予想をはるかに上回っている」という。
ニューウェルはSteam Deckの発売や今後について、IGNのインタビューに答えた。Steam Deckの具体的な開発期間や、本機の構想がNintendo Switch以前から存在したのかどうかについて、彼の口から語られることとなった。ニューウェルによれば、「お気に入りのPCゲームをどこでも楽しむ」のは古くからPCゲーマーが憧れていたことであり、任天堂がSwitchを発売した時期よりはるか前から考えられていたのだという。
「Steam Deckのような製品は、あらゆるゲーマーが望んでいたものだと私は思います。PCゲームを遊び始めて1カ月ほど経てば『このゲームの携帯機版があったらいいのに』と思うはずです。Steam Deckと同じようなコンセプトを目指した製品企画は、1990年代からすでにありました。PCゲームを携帯機で動かせるほどにハードウェアの省電力化・高性能化が進みましたが、PCゲームを携帯するという構想自体はあのときと同じなのです」
当時の技術では困難であったが、PC業界ではこういった構想が常に存在したと、ニューウェルは語る。15年ほど前にAppleが初代iPhoneを発売して以降、携帯ゲーム業界が一気に変化した事例さえ引き合いに出した。
「ソフトウェアと入力面での課題をクリアしなければいけないときがあったとして、iPhoneの発売はまさにそれをクリアした事例です。iPhone発売前と発売後で、一気に何もかもが変わったでしょう。特定の目的に特化した端末としてBlackberryもありましたが、どんな目的にも使用できる多機能モバイル端末として、iPhoneの発売はターニングポイントだったのです」ニューウェルは続ける。「モバイルゲーミング端末で何でもできる現代だからこそ、PCゲーマーにとってすばらしい時代が始まります」
PCゲーム以外の分野でも似たような構想は常にあり、技術的に可能となるタイミングが来ればその構想をうまい形で実現できると、ニューウェルは指摘する。iPhoneがいかに革命的な発明であったかを考えれば、この比較はさらに重みを増す。最初の「スマートフォン」であるiPhoneの発売以前にも、Blackberry 850やHandspring Treoなどの携帯端末は存在した。そしてSteam Deckの発売以前にも、GPD WinやAYA NEO NEXTといった携帯型ゲーミングPCが存在していた。
Steam Deckは世界初の携帯ゲーミングPCではないが、Valveは長期的な目線で計画を練っていたようだ。実際ニューウェルは、「(Valveの)予想をはるかに上回る需要」があったと語っており、開発者たちが驚くほどSteam Deckの人気は高いようだ。ValveがSteam Deckの新モデル開発を検討しているのも当然の流れである。
Steam Deckの発売はPC業界に大きく影響を及ぼすだけではなく、ほかの企業もSteam Deckが持つコンセプトに影響を受け、そこに自分たちの影響も与えていくだろうと、ニューウェルは予測している。「いまは、Valveが自社で開発したハードウェアを売っているだけです。しかし我々がSteam Deckで解決しようとしている課題は、PC業界のほかの企業にも当てはまるものです。(中略)Steam Deckが提示したソリューションは、これからPCゲーム市場全体で活用されていくと考えています」
過去にもほかの携帯型ゲーミングPCは存在しており、Steam Deckのコンセプトも完全無欠ではない。それでも本機は「携帯型ゲーミングPC」という長年の構想を、次のステージへと進めるものとなる。