かつて「眠れる獅子」といわれた中国ですが、現在では完全に覚醒し、アメリカと並ぶ超大国にまで成長しています。
2000年代以降、急速に経済成長した中国は、あらゆる産業でその影響力を強めていますが、それは自動車産業についても例外ではありません。
現在、世界全体における年間の新車販売台数は9000万台強ですが、そのおよそ30%弱にあたる約2500万台が中国市場で販売されています。
ここ数年は以前ほど伸長していませんが、中長期的に見れば3000万台から4000万台規模まで成長するという予測もあります。
中国の新車販売台数が、世界トップに躍り出たのは2009年のことです。
そこから1度も首位の座を明け渡していないことからもわかるように、すでに中国は自動車販売国として世界最大の市場であることは明らかな事実です。
筆者(瓜生)は、2012年から毎年のように国内外、そして中国各地のモーターショーなどを取材していますが、展示される車両の台数や、会場の規模といった定量的な部分はもちろん、各メーカーの意気込みや、現地および海外メディアの熱気といった定性的な部分を見ても、中国のモーターショーは世界随一だといえます。
一方で、ビジネスの世界では「チャイナ・リスク」という言葉があるように、中国特有の「危うさ」を感じるのも事実です。その代表的な例が、デザインや技術の模倣、いわゆる「パクリ」の問題です。
はじめに付け加えておくと、デザインや技術の類似性を法的に証明するのは非常に困難であり、感情論や印象論だけで「パクリ」と断ずることはさまざまな危険をはらむことになります。
しかし、それを加味したうえでも、「パクリ」と感じざるを得ないクルマを会場でしばしば見かけるのも事実です。
また、中国では外資系自動車メーカーが中国国内で新車を生産・販売するためには、原則として現地の自動車メーカーと合弁企業を設立する必要があります。
中国側の視点で見れば、潤沢な自国の市場と引き換えに技術や生産ノウハウを共有してもらうための戦略です。
この戦略自体はまったくアンフェアなことではありませんが、予期し得ない技術流出などといったリスクがつきまとうことは否めません。
さまざまなリスクがあるとはいえ、世界各国の自動車メーカーが中国市場に注力するのは、それほどに13億人を超える人口を擁する中国市場が魅力的だからにほかならないでしょう。
しかし、中国の自動車産業には次の戦略があります。2015年に発表された「中国製造2025」という国家戦略で明らかにされた、「2025年に世界の自動車強国の仲間入りをする」という内容がそれにあたります。
「自動車強国」という言葉が、アメリカやドイツ、そして日本といった国々を意味していることは明らかです。
前述した世界の新車販売台数9000万台強のうち、これら「自動車強国」の自動車メーカーが生産しているのはおよそ70%から80%に及びます。
あと5年足らずで、中国はこれらの国々に比肩する自動車生産国として名乗りを上げ、近い将来に自動車生産国としても世界最大級になるという意志を明確に示しているのです。